2010年2月23日火曜日

左文字のすすめ①

はじめに----現代で文字を書くこと


 忙しい現代生活を送っているわれわれは、毎日のように新聞、雑誌、書籍、インターネットなどでたくさんの文字情報に接して、頻繁に読み、書きをしている。会社でも、学校でも、家庭でも文字情報は大量に利用されている。

 

 しかし歴史的に見れば、現在のように全国民が、大量に、頻繁に、文字情報を扱うようになったのは、ごく最近のことである。教育制度が整い、高学歴化が進み、経済社会が拡大し、社会のネットワークが発展し、雑誌や書籍が大量に発行され、パソコンが普及しインターネットが普通に利用されるようになった現代の現象といえる。

 

 ところで現在使っている日本語は、漢字は中国で三千年前の古代文字から改良して発展したもので、ひらがな、カタカナは千年前に日本で作られたものだ。どちらも成立当初から長い間、ごく一部の役人や知識人だけが限られた用途で使用し、大多数の一般大衆には無縁のものだった。

現在の漢字の原典になっている一八世紀清朝の康煕字典の成立当時でも、中国での識字率は五%程度に過ぎなかったし、実際に文字を書く人の割合はさらに少ないだろう。日本の事情も同様と思われる。そういう古い文字が、長い年月を経て多少の簡略化はあれ、現在でも一般に使われていることは、考えてみれば、驚くべきことだ。

 

 このように長い間、ごく一部の人間しか用途のなかった文字が、現在のように全国民が頻繁に使うようになって、社会の大きな進歩があった反面、何か不都合はないのだろうか。