左文字を書いてみて、その読みにくさを考えてみてわかることは、文字とは結局、図形に過ぎないということで、読みやすさは、その図形に馴染んでいるかどうかできまるということだ。
逆に、右文字つまり普通の文字はなぜ見やすいのか、というか、全く違和感なく自然に見えるのかと言えば、それはしょっちゅう見ていて、まったく見慣れていて、もうそこに文字があるというよりも、文字のかたまりがあるということで、文字のかたまりの背後にある意味やイメージが見えているからだろう。
結局のところ、左文字を使いこなすには、左文字が読めるだけでなく、左文字の背後にある意味やイメージを読めるまで、習熟する必要があることになる。しかしこれは、われわれが普通の文字が読めるようになった学習過程とまったく同じことだ。つまり、なんども文字を書き、連語を書き、文章を書いて、手と脳を使い、憶えたように、やることだろう。
文字は線で作った図形に過ぎない、ということは、一般的には当然なことかも知れないが、わたしには、この左文字を通してはじめて実感として気付いたことで、新鮮な発見だった。